知らないと怖い約束手形の話 不渡り、巨額損失の恐怖

経済産業省は約束手形の支払い期限を最長120日から60日に短縮する方針とのニュースが流れました。
経営者とか、経理担当でもない限り一般の人が手形を手にすることはあまり無いと思いますが、独立開業するなら知っておいて損はありません。
とはいえ、僕も実際に手形を受け取ったことはありません。先輩経営者から「手形だけは受け取るな。分割にしてもらってでも現金払いにしてもらえ」と口酸っぱくアドバイスされました。聞いた話、見たことを書いてみます。内容には気を付けて書きましたがもし、間違った内容がありましたらごめんなさい。
120日手形は発行する企業にとっては便利なものかもしれませんが、中小零細いじめに他なりません。60日に短縮は当然どころか遅すぎだなと思います。

ところで、支払い期日が日数で規制されていたことを今回初めて知りました。〇ヶ月手形と呼んでいました。わかりやすいですからね。

現金化までに半年!

仕事をして請求書を出して、翌月集金に行き手形を渡されたとします。120日手形だったとすると、現金が手元に入るまで仕事をしてから半年後ぐらいになります。当然資金繰りは厳しくなります。
不渡りになった場合は悲惨です。不渡りとは手形に記載された期日に銀行へ持ち込んでも、当座預金の残高不足などが原因で現金化できないことです。
毎月取引していれば手元に数枚の手形が残っている状態となります。倒産ともなれば最悪半年分の売上が損失となります!連鎖倒産の原因の一つには長期の手形も関係していると思います。

苦肉の策、廻し手形

期日前の手形はただの紙切れ。しかし、苦肉の策として期日前の手形を支払いに使うことができます。裏書(社名と押印)をして請求先への支払いとします。「廻し手形」とか「廻り手形」と呼びます。
しかし、大きな問題もあります。
「かんべんしてよ」と言われかねないことです。手形の発行企業の信用が低いとそう言われる確率は高いです。
しかし、「うちも苦しいんで・・」ということで手形は事業者間を巡っていきます。
支払い期限の長い廻り手形は裏書がずら~っと並ぶことがあります。最後に受け取った人は祈る気持ちで銀行で現金化の手続きです。現金化されれば何の問題もありません。
不渡りになってしまったら、廻り手形をもらった相手に請求することになります。請求された相手ももらった相手に・・・ということで裏書の順番に請求ということです。
最初に手形を受け取った人は不渡り企業からの債権回収ミッションが待っています。
長期の約束手形は、不渡り被害者増幅装置になります。

1度、ある会社で廻り手形の寄せ集めでの支払いというケースを見たことがあります。少額の支払いで期限の長い手形は経営が厳しいのだろうと警戒されます。
そんな廻り手形を数社分集めての支払い・・・経理担当者の落胆ぶりが気の毒でした。

手形の割引

回し手形はやりたくない。となると手形の割引となります。
期日前に金融機関などに持ち込んで買い取ってもらう感じです。やったことが無いので、話を聞いたことがあるだけですが。
当然額面満額では買い取ってはくれません。発行した会社の信用度によって金額が割引かれます。割引率によって会社の信用度がわかります。
会社によっては取引先の手形を毎月割引に出していたりします。毎月信用チェックしているのと同じです。
決算を公表していない企業であっても、下請け企業は取引先企業の経営状況を把握しているものです。注文や納品状況でもわかりますし、手形割引もその情報となります。
下請け企業同士、横のつながりで情報共有されることもめずらしくありません。
取引内容などを話すことはもちろんできませんが、
「気をつけな」で察することができます。
長期の売掛金をかかえた状態で経営の厳しい企業との取引、そりゃ敏感になりますよね。

最悪は地獄へ落ちる

運転資金に窮している会社が2社あるとします。月末の支払いに現金が足りない状態です。困った社長さん同士で相談です。
「お宅はいくら足りない?」
「うちは〇〇〇」
ということで同額の手形を切りあいます。取引は無いのにです。
こうして交換した手形を割引して運転資金にあてるのです。この行為完全にアウトです。
翌月も運転資金に困るわけです。また手形を切りあいます。数か月後には交換しあった手形の支払日が来ます。もっとお金が足りなくなります。
手形の交換が続きます。最後に手形の割引が受けられなくなって終わりです。
待っているのは不渡りと巨額の負債です。まわりの、家族、社員、取引先の傷も深くなります。

手形は危険ですよと言いたいです。零細からの偏った見方であり、発行する企業側からはもっと違った見方になるのかもしれませんが。
長期の手形は、発行企業の信用リスクや運転資金を強制的に負担されている面があります。期間の短縮は当然のことだと思います。